出国命令制度とは

 出国命令制度とは、2004年の入管法改正に伴い設立された制度で、日本に滞在する不法残留者に自主的に出頭させ出国させるための措置です。一定の条件を満たし、自ら出頭した不法残留者は身柄を収容されることなく日本から出国することが可能となり、通常、帰国後は入国拒否期間が5年間以上(場合によっては10年間)となるところを1年間に軽減されます。

自主出頭した場合には、
①身柄が拘束されない
②帰国後の入国拒否期間が1年間に軽減(通常は5年間以上、ケースによっては10年間)されるといったメリットがありますが、すべての不法滞在者が出国命令制度の対象となるわけではありません。出国命令制度の対象とるのは次の条件に該当する場合です。

① 出国の意思をもって自ら入国管理官署に出頭したものであること
② 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
③ 窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
④ 過去に退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
⑤ 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること

 出頭者がこのような条件に該当すると思われる場合には、入国警備官は収容前置主義の例外として収容することなく入国審査官に引き渡すこととなり、速やかに出国命令制度に該当するかどうかの審査が行われます。そして、該当すると判断されれば、出国命令書が交付され15日を超えない範囲内で出国期限が定められることなります。

 ただし、条件において注意する点としては、①については、出国の意思があったとしても警察や入管などに逮捕されて退去強制となった場合には、自らの意思ではないので出国命令制度は適用されません。また、②の不法残留とは、正規の在留資格を持っていた外国人が在留期限後も更新の手続きなどをすることなく、日本に滞在し続けることを言います。そのため、偽造のパスポートで入国した場合などは不法入国となり、出国命令制度の対象とはならないので注意が必要です。出頭者は不法滞在していることが前提ですから、万が一にも条件に該当しない場合は収容された上で退去強制手続きが取られる可能性もあります。そのため、出国命令制度を利用する場合には条件に該当しているかどうかを十分に確認しなければなりません。

 出国命令制度に該当した場合には、出頭からおよそ2週間ほどで出国することが可能になります。出頭時はパスポート(紛失している場合には身分証明書など)や外国人登録証明書などをもって出頭することになります。最終的には帰国のための航空券や予約確認書なども必要となりますが、ケースにより実際に出頭してから帰国するまでの日程が異なるため、チケットを無駄にしないためにも一度出頭してから入国管理局の指示をうけて購入すべきです。

 国際結婚において出国命令制度を利用するケースとしては、外国人配偶者などを一度帰国させ、再度日本に招へいするケースでする。外国人配偶者が不法残留しているような場合には、退去強制手続きに基づき在留特別許可を求めるケースと、出国命令制度を利用して再度呼び寄せるケースの2者択一となる事が多いのですが、前者の場合には日本にいながらにして正規の在留資格が与えられる可能性がある一方、最終的な結果が出るまでに2~3年もかかる場合もあり、その期間中に警察官の職務質問などにより逮捕され入国管理局に収容される可能性もあります。後者の場合には、出国命令制度の条件に該当すれば収容されることなく帰国でき、本国では自由に過ごすことができ、また、退去強制後の入国拒否期間は1年間となるため、その後は「日本人の配偶者等」などの在留資格認定証明書の交付申請を行うことも可能となります。このように出国命令制度にはメリットがあるようにみえますが、利用する際には注意が必要です。というのは、入国拒否期間が経過したことと在留資格を与えられることは全くの別物であるため、帰国後に在留資格認定証明書の交付申請をしても必ずしも許可されるとは限らないのです。しかも、「日本人の配偶者等」の在留資格を申請する際には2国間をまたいでの婚姻生活の継続性なども審査されることとなるため、日本に居住する配偶者は多大な労力を伴うこととなります。相手国での一定期間の同居が可能であったり、頻繁に渡航できる時間と費用が捻出できればよいのですが、日本で定職についている場合にはこれも難しいことが多く、手紙や電話でのやり取りの他に生活費の仕送りなどの交流が続くだけでは、1~2年で婚姻生活が破綻してしまうケースも少なくはありません。

 そのため、日本での婚姻生活を希望する場合には、退去強制手続きに基づき在留特別許可を求めるケースが圧倒的に多数をしめます。もちろん、出頭者が数年にもわたり日本で不安定な生活をつづけることに精神的に耐えられない場合や、何らかの事情により在留特別許可が付与される可能性が少ないと思われる場合には、出国命令制度で帰国して呼び寄せることも考えられますが、あくまでも例外と考えた方がよいでしょう。ちなみに、在留特別許可を希望するため退去強制手続きを受けて自ら途中で帰国した場合や、最終的に在留特別許可が付与されなかった場合には、もちろん出国命令制度は適用されず最短でも5年間の入国拒否期間となります。そのため、双方の制度のメリット・デメリットを把握した上で、総合的に判断しなければなりません。

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